(前編より続く)
各団体の紹介が終わると、今度は参加者からの質問をベースにお二人の頭の中を語っていただくという流れで会は進みます。大きなカテゴリーでは、「プロボノ、そして協働という形について」「その先にある個人の変化と社会の変化」「ソーシャルセクターの未来」という3つに質問が集約しました。その中でもいくつかの質問をピックアップして、振り返ってみたいと思います。
Q「協働の仕組みとして、団体側はチームメンバー(パートナー)を選べないということがありますが、その仕組みはどう思いますか?」
通常、SVP東京が支援先として採択する条件として、最低5名のパートナーが手を挙げる(2年間、チームメンバーとして支援することをコミットする)というものがあります。平均して7~8名のメンバーが集まることが多いですが、そこに専門性のポートフォリオが考慮されているということもなく、また本業の多忙さやプライベートの環境変化などで、そのコミット具合も変化する可能性もあります。
団体側からすると「リスク」ともとれる仕組みですが、「そこは比較的ドライに考えていいのでは?」とコメントをしたのは小沼氏。やはり人間、波長が合う、合わないということはありますし、「この人と一緒にやりたい!」と思えるかどうかは最初からわからない。逆に、多くのチームメンバーがいて、時間の経過と共にそのあたりが明確になって淘汰が起きて、抜けたい人が幸せに抜ける、という形が理想だと。
「どちらにせよ、チームビルディングの時間は大切ですよね」とまとめる三輪氏。全くバックグラウンドの違う、知らない人たちでチームを作るわけで、それぞれのパートナーがどんな想いで、なぜ参加しようと思ったのか・・・そういったところを分かり合うセッションのようなものがあった方がいいのでは?と、逆にSVP東京へのリクエストをいただきました!
Q「パートナーの中には、ソーシャルの世界に足を踏み入れたばかりの人もいると思います。そういった人たちが協働の中で変わった、突き抜けた、と感じたことはありましたか?」
この質問への回答に際して、小沼氏に説明いただいた「プロボノ」という働き方における4ステージというものがあるのですが、当日リアルタイムにグラレコしていただいたものを、図解として置かせていただきます。
このステップにおける、「4」まで至る人、これが、質問にある「突き抜けた」人、ということになるとのこと。実際、小沼氏も三輪氏も、自分たちのチーム内で、そういう人が出てきた、と発言していました。
「4」まで進む人というのは、自分のコンフォートゾーンから出て、相手方に一歩踏み込める人。踏み込むことによって個人として「突き抜ける」ことになり、団体との関係も強固なものになり、協働が終わってもその関係は続いていくことが多いようです。
これは、必ずそこまで行かなければいけない、ということではなく、なんとなく緩く協働して、お互い傷つけずに気持ち良い形で終わるという形が悪いというわけではない、とつけ加える小沼氏。「ただ、お互いに、踏み込むかどうかという踏ん切りは、早めに決めた方がいいと思います」
Q:「協働を通じて関わったパートナー、もしくは他のプロボノやボランティアなど、活動に関わった個人が世の中の問題を自分事化して変われた先に、世の中(社会)は変わるのでしょうか?」
この質問は、ソーシャルセクターならではの、色々と含みを持った質問だったような気がします。個人の行動変容が、社会にどれだけのインパクトを与えられるのか、それが本当に社会を変えるのか?我々のやっていることは、果たして方向性としてあっているのか?そんな疑問がつきまとうのが、ソーシャルビジネスです。
「一隅を照らす」という、最澄の言葉を引用して話し出したのは、小沼氏でした。一隅というのは、みんなが気づいていないほんの片隅、一角、という意味。クロスフィールズはまさに、事業そのものが個人の変化をテーマにしているため、関わった人たちが変わっていることは確信しているとのこと。あとはこの一人ひとりが自分なりの「一隅」を見つけて、そこを照らす努力をすれば、明るい部屋ができあがる、それがコレクティブインパクトだと思います、と熱いコメントをしていただきました。
「ただ、明るくするための努力はし続けないといけないですが」と締めくくる小沼氏の言葉を受けて、三輪氏が続きます。「関わる人たちに、ロールモデルを作ってあげたいと考えています」今までe-Educationの活動に携わってくれた人は、インターン生もあわせると数百人。彼らが活動を通してどう変わったのかを可視化できれば、これから関わる人にとっては、何が足りないのかがわかり、目標ができる。そして、かならず白紙(余白)を残し、自分なりにやりたいこと、課題など、個々人の野望も加味すると、未来に向けて夢が広がるという。
結論:個人が変わり続ければ、社会は必ず変わる!
Q:ソーシャルセクターの現状を打破するものとして、具体的にどのような可能性が?
「ゲームチェンジャーとしては、やはりテクノロジーでしょうね」田舎で牛がwearableをはいている。難民キャンプで生体認証が採用されいている。国連がブロックチェーンを採用している。
社会の仕組み、ルールがどんどん変わっていく中で、いかにソーシャルセクターがついていくか、そしてどうやってテクノロジーのトップスターをアトラクトしていくかがキーになる、と力説する小沼氏。
さらに、世の中のルールそのものを変えていくために、変えられる人を生み出していく、ということも大切だという。小沼氏も名を連ねている新公益連盟という組織があって、これは連帯して国に対して声をあげて政策提言していくというもの。直近では、公務員のソーシャルセクターでの副業を可能にし、そのインパクトの大きさが窺える。
「そうですね、官を動かすというのは非常に大事ですね」と三輪氏も続く。ただ、テクノロジーに強い人が国を変えられるかというと、そうではないと言う。なぜなら、彼らは変え方を知らないからだそうだ。ここに「連携」が必要で、官の文脈を知っている人・理解している人がいて、きちんとお互いの解釈を「通訳」できることで、初めて双方向コミュニケーションが成り立ち、国を変える可能性が出来るのだそうだ。
Q:ソーシャルセクターがこの先厳しい、ITも駆使しないと、という発言があったが、数で勝負できないエリアはどうなるのか、今後我々はどうあるべきなのか?
ソーシャルセクターがテクノロジーをやるべき、という話ではなく、どういう形でバリューを出していくのかをしっかり考えることが大切。「これがこの課題のキーポイントだ」というものをつかみ、一点突破型で最高のモデルを作る。あとはそれをスケールアウトさせるために、テクノロジーが必要なのか、国が変わる必要があるのか、手段を検討する。中途半端に広げていくのが一番いけない、と小沼氏。
先ほどセクター間のコミュニケーションということに言及した三輪氏は、一人でやることの限界を訴える。右を見たり、左を見たり、をひとりで高速でやろうとしていたが、本当は右を見ながら左を見なければいけない。それをするためには、右を見ている人と左を見ている人が両立できれば良く、そのためには組織がなければいけない。E-educationも今、7人のメンバーがいて、初めて原点に立ち返れたという。
【総括】
SVP東京が設立された時分には、まだプロボノという言葉すら知っている人がほとんどいなく、またソーシャルセクターでの中間支援団体という立ち位置も非常に特異でした。今、15年の時を経て、社会人が副業やボランティア、プロボノという形でソーシャルセクターに関わることがそれほどレアなことではなくなり、我々のような中間支援団体も増えてきています。これから先、ソーシャルセクターのプレイヤーたちが本当に世の中を変える、インパクトを出していくために、関わる一人ひとりが意識を高く持ち、関わる活動の質という点も意識していかなければいけない時代になってきているのかもしれません。