11月30日夜7時から、約30人が東京・飯田橋の会場に集まり、【SVP東京20周年・ワークライフシフト with SVP ~未来を創る“仲間” に出会う~】と題したイベントを開催しました。
【登壇ゲスト】
■相良 美織さん
株式会社バオバブ代表取締役
https://baobab-trees.com/
SVP東京在籍:2008-2014年
商社、金融業界を経て、2010年にバオバブ を創業。当初は機械翻訳の学習データなどを手がけていた。現在は、Carnegie Mellon大学やNTT東日本など、国内外の研究機関や大企業などにAIのための学習データを提供する事業を行い、AI学習データの作成には、生活環境や障害などさまざまな事情で一般就労が困難な人々を積極的に採用している。
2020年、Google for Startups Accelerator採択。2021年、東京女性経営者アワード受賞。2022年、コンピュータビジョンに関する世界トップレベルの学会であるCVPR 2022にて共著論文が採択。2023年、「J-Startup」「J-Startup Impact」に選定。
■石川 貴志さん
一般社団法人Work Design Lab代表理事
https://work-redesign.com/members/ishikawa_takashi/
SVP東京在籍:2012-2017年
IT企業、人材総合サービス企業、出版書籍流通企業にて事業開発・経営企画等を経験。2013年にWork Design Labを設立し「働き方をリデザインする」をテーマに、イントレプレナーコミュニティの運営、企業・行政・団体等と連携したプロジェクトを全国各地で推進。首都圏複業ワーカーと地方企業をつなぐ様々な活動に注力する。
2018年、AERA「生きづらさを仕事に変えた社会起業家54人」選出。総務省地域力創造アドバイザー、観光庁新たな旅のスタイル促進事業アドバイザー、中小機構TIP*Sアンバサダー、経営情報イノベーション専門職大学客員教授、関西大学非常勤講師などを務める。
■中島 満香さん
合同会社swan代表社員
https://www.swanconsultant.com/
SVP東京在籍:2009年-
大学院卒業後、大手建設コンサルティング会社、外資系コンサルティング会社で、地方自治体や国に対する公共事業の計画立案や公民連携の分野で延べ150件以上のアドバイザー業務に携わった後に独立。 「地域のことは、地域の人で」をミッションに、自治体営業経験を活かして社会課題の解決に取り組む中小企業・NPOの行政連携を支援。行政提案のサポートを通じて総額8億円超の業務受託に貢献。
2021年から「移動花屋」を始め、2022年に東京豊島区駒込にて花屋の実店舗「komatokamo」をオープン。人と街をつなぐコミュニティハブを目指す。
https://www.instagram.com/komatokamo/
■藤原幹太さん
認定NPO法人カタリバ職員
https://www.katariba.or.jp/outline/member/37688/
SVP東京在籍:2020年-
愛鳥家。新卒でコンサルティング会社に入社し、中央省庁や広域自治体などをクライアントに戦略検討などを担う。2020年にSVPに参加し、かねてから興味のあったNPO業界に片足踏み入れる。SVPでの協働を経て両足踏み入れる決意をし、2022年に認定NPO法人カタリバへ転職。現在はカタリバのインキュベーション事業部で、10代の居場所づくりに取り組む全国の団体への伴走支援を担当する。
夜7時、司会を務めたSVP東京パートナーのレイモンド・ウォングから、SVP東京の20年の歴史や投資・協働の仕組みについて概略を話すところから始まり、ゲストの自己紹介と活動紹介に。
(相良美織)みなさん初めまして。月末の忙しい中を来ていただいて本当にありがとうございます。
今日、私は札幌から参りました。コロナをきっかけに2年前に東京から札幌に移住しました。株式会社バオバブの代表で、2010年に創業、「誰もがその人らしくいることが受け入れられて、人生の選択肢が開かれている社会の実現」を目指しています。
ビジネスとしては、A Iのコアの技術である機械学習のための学習データを作っています。全世界に、1200名以上の「バオパート」と呼んでいる、学習データを作ってくれる人たちがいます。この「バオパート」について紹介させてください。自閉症や発達障害者の方々に、学習データを作る「アノテーション」という作業を依頼しています。40ページ以上のガイドラインを読み込んで、丁寧に安定的に正確にアノテーションするのはとても大変なのですが、それを自閉症や発達障害の人たちは非常に素晴らしいパフォーマンスで作ってくれるんです。学習データの品質が低いと、質の低いモデルしかできないので、A Iのモデルに対してきれいなデータを作るのは大切なことです。
彼らのパフォーマンスが高いことは素晴らしいのですが、加えて、すごくうれしいことがあります。「明るくなった」「発話ができるようになった」「一回も声を出したことがない人がアノテーションを始めたら発音するようになった」こんな声を支援員さんからよく伺います。これはなぜだか理由はわかりません。自閉症にはペットを触るのが良い、土を触るのが良いと言われていますが、実際には必ずしもなかなかうまくいかないところもありました。でも、アノテーションは違う、利用者さんに変化が生まれているというのです。これはすごくうれしいことです。
また、昨年6月からウクライナやシリア、アフガニスタンなどからの避難民の方々に、こうしたアノテーションのワークショップやトレーニングを提供して、実際にバオリーダーやバオパートに育成しています。
(石川貴志)一般社団法人ワークデザインラボ代表の石川です。ワークデザインラボはSVP東京と似ていて、本業を持っている方々が約200名、北は北海道・稚内から南は沖縄・那覇まで活動しています。メンバーのほとんどは東京在住の方なので、ワークデザインラボが単独で事業活動するのではなく、現地の経営者の方と一緒に事業を作るという感じです。年齢は60代中盤ぐらいから20代で、本業が会社員の方が7割、経営者が3割です。
2013年から活動していて11年目、私自身も副業というか、会社員をやりながらでしたが、2年前に会社を辞めてこの活動をしています。
今日のテーマはライフシフトということなので言うと、家族構成は妻と長女長男次女です。みなさんもそうかもしれませんが、本業をやりながら外の活動をしていると、時間がどうしても崩れそうになると思います。ワークデザインラボでは「事業づくり、人づくり、社会づくり」と言っていますが、実は、個人的には家族やパートナーシップにも関心があります。
2012年にSVP東京に参画して、2017年に卒業しました。
ワークデザインラボでは現地の経営者の方と一緒に事業作りをするので、経営者からお金をもらっています。ただ、お金をたくさん稼ごうという訳ではなくて、交通費にあてるなど、活動を最大化することを目的に進めています。今日は鳥取から帰ってきたのですが、鳥取の企業さんは手伝うと、蟹で払う。「蟹払い」。(笑)蟹は今年、結構高いですので。(笑)
「いきいきと働く大人であふれる社会。そういう大人を見て、子どもが未来に夢を描く社会をつくりたい」というビジョンを掲げてやっています。
各エリアにリーダーがいて、ほとんどが故郷にゆかりがある人ですね。例えば、Mさんは本業は人材会社で働いていますが、長崎出身で東京在住。地元高校のOB・OG会の幹事をしていて、OB・OGが東京にたくさん出てきているので、その人たちと地元企業を繋ぎ産業振興にできないかと考えられています。Kさんは、静岡から東京に新幹線通勤しているため、地元静岡の案件をリードしてくれています。
社会全体を教室化していき、興味があるプロジェクトに個人が入っていけば、会社というフレームにとらわれず、学びの機会が増えていくんじゃないかということでやっています。
(中島満香)「花屋 × コンサル」をしています。
なぜ花屋を始めたかというと、2年前のゴールデンウイークの5月3日だと思いますが、突然、花を自転車のかごに詰めて売ってみようと思って売り始めたんです。
当時、コロナ禍ですよね。リモートワークで1年ぐらい人と会っていなくて、私は管理職として手を動かさずに仕事ができる状態になり、働いている実体験が持てないことに疑問を感じ始めました。「私は生きてるよ」と思いたくて、花市場に行ってみたんです。花が買えるかどうかわからなかったけど、勇気出してみたら買えたんですね。でも10本単位でしか売ってなくて…。いくら花が好きとはいえ家に飾るには多く、余ったお花をお裾分けする気持ちで売り始めたんです。
自転車のかごに花を入れて、巣鴨の地蔵通り商店街を3往復ぐらいして、わかったんです。人は立ち止まらないと買ってくれない、と。そして、駒込駅前の徒歩1分ぐらいにあるカバン屋さんがたまたまゴールデンウイークで閉まっていたので、その前で自転車を止めて売ってみたらお客さんが買ってくれた。味をしめて、そこにずっと立っていたらお店のオーナーさんが帰ってきて、「わわわ…」と。他人の敷地で勝手に商売していましたからね。(笑)
次の日に菓子折りを持って行ったら、「ああ、いいわよ」みたいな感じで、受け入れてくれた。
今は、そのオーナーさんがカバン屋さんを畳んだ後に私が入って、花屋になっています。なので、ご近所では「わらしべ長者」と言われています。(笑)
こんな感じで、自分の関心のあることをちょっと始めたら、そこに応援してくれる人が出てきて、こっちもうれしくなってもっとやっちゃうと。私が市場でかわいいと思った花を同じようにかわいいと言ってくれる人たちとのコミュニケーションがどんどん生まれてきて、そういうことが楽しくてやっています。
駒込と巣鴨の間にあるので、名前を「komatokamo」にして、2022年12月9日に開店しました。来週で1周年になります。生花の販売だけではなくて、絵本の読み聞かせや、近くの福祉作業所の職員さんが趣味で焼いたシフォンケーキを売り始めたり、自分の手の届く範囲のつながりを大事にしながら、チャレンジしたいと思った人のチャレンジをどんどん受け入れる場所にしています。
この10月からは、店先で有機と自然農法の野菜販売もスタートしていて、最近は「八百屋ですか?」と言われるぐらいです。
「花屋 × コンサル」と言いましたが、私は「地域のことは地域の人で」というコンセプトでコンサルもしています。もともとコンサルタントとして、公共事業のアドバイザーを20年ぐらいやってきましたが、どうしても会社はビッグプロジェクトばかりに行くのが嫌になってしまって。地域の小さな課題は大手の企業では解決できないんですね。一方で、地域の企業は補助金漬けになったり、下請け慣れしたりしているので、行政としてもその人たちを担い手として見ていない。誰かがそのミスマッチを埋めなければ、ということで、地域に根差した中小企業さんやNPOさんを自治体のパートナーとして送り出すコンサルの事業をしています。
花屋とはまったくかけ離れたことをやっていますが、気づいたこともあります。地域に出て何も肩書がないところで自己紹介する時、最強なのですよね、「花屋」は。
「公民連携のコンサルタントです」と言うと、「何それ?何するの?胡散臭い」みたいなのが普通の反応なのですが、「花屋です。ちなみにコンサルやっています」と言うと、「え?どういうことですか?」みたいに、すごく食いつきがいいんです。花屋は人の心のバリアを下げる、人と人をつなげる素晴らしいツールだと思っています。
(藤原幹太)3人のお話を聞いて、僕の役割は、SVPには普通の人もいると思ってもらうことかなと思いました。(笑)
僕はいま30歳で、SVPと縁が深くて、学生時代にNPO法人クロスフィールズでインターンをしたのですが、SVPの協働団体でした。その後、外資系コンサルティング会社に就職したのですが、その会社はSVPと共同事業があり、それにも関わっていました。その後、SVPの協働先の認定NPO法人カタリバに転職しました。SⅤPがなかったら僕の人生がないなと思うぐらい、感謝だと思っています。
カタリバは教育系NPOで、子どもたちの探究の活動を応援する事業や、困難を抱えた子どもたちに対していろいろな機会を提供する事業をしています。1年間に合計8.3万人の子どもたちを支援しています。
カタリバとSVPの協働は2009年からで当時の事業規模は小さかったのですが、今では約16億円の事業規模があり、日本のNPO法人で10位以内に入る規模になっています。
自分たちで事業をするだけではなく、他団体のサポートをする事業が僕が入る頃から始まり、カタリバがやってきたようなことをやりたい地方の団体さんに対して、伴走支援をする事業を始めています。新しい支援先の団体の選考や伴走の方針の検討など、僕はSVPで学んだことを活かして仕事をしています。
それぞれ個性的な4人の自己紹介に続いて、SVP20周年の企画のひとつとして、歴代の投資・協働団体とパートナーに対して行ったアンケート結果について、SVP東京(共同代表)の戸田有美から紹介しました。
※アンケート概略は発表済みの資料をご覧ください。
https://svptokyo.org/wp-content/uploads/2023/09/20th_research_flash_report.pdf
〈主な内容〉
・SVP東京に加入した時点でのパートナーの社会人歴は、「11年~20年」が最多で31%。
・パートナーの職種は「ビジネスセクターの経営者/役員」が20%で最多なのが特徴。一方で職種はかなり分散している。
・加入することを決めた理由は、「社会課題の解決に貢献したいから」が最多。続いて、「自分の視野や知識を広げるため」「未知の環境に身を置いたり、新しいチャレンジをするため」。
・参加した影響としては、【普段とは異なる業種・業界の人と話すことが、人生の充実につながった】【社会活動を支援することで、自分自身がエネルギーを得られた】が上位に。
・参加することで、どのような成長や変容があったかについては、【多様な・幅広い視点の獲得】【人脈の獲得】【社会課題解決への貢献】が相対的に高かった。
アンケート結果を受けて、登壇ゲストによるセッションへ。
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(司会レイモンド)SVPに入ったきっかけと、学んだことがあれば教えてもらえますか。
(藤原)僕がそもそもSVPに参加しようと思った背景として、学生時代にNPOでインターンをしたぐらい、ソーシャルセクターに関心がありました。起業して間もない団体さんにとって僕は何ができるんだろう?と自信がなかったので、何ができるか知りたかった、探りに行ったという感じです。SVPに入ったら、僕は一番若いぐらいで、ベテランの方々がいて、自分ができるのかなと悩みながらでしたが、若くて「何でもやります」というだけでも貢献できることに気づいたという学びはありました。
それでも団体さんに喜んでもらいましたし、なんだかんだ言って、「僕がいなかったら、きっとこういう風にならなかっただろうな」と思えるような2年間が過ごせた気はします。そこが自分にとって一歩踏み出す勇気というか、自信につながったと思っていて、気持ちだけあればできるんだ、その思いが大きかったですね。
(中島)最初に入った会社は建設系のコンサルティング会社で、ダムを作り、公園を作り、道路を作り、街を作っていました。ある時、水源地域の活性化の業務に従事する機会をえて、業務としてお金をもらってイベントを開催し、地域の人と一緒に企画をして盛り上げていました。ですが、政府の方針変更によって公共事業のお金の使い方が見直され、活性化予算も大幅に減らされました。
その頃すでに水源地域の人たちと関係ができていたので、「熊が取れたから熊を食べにおいでよ」と言われたら、自分のポケットマネーで片道3時間、4時間かけて行くということを繰り返していたんですが、それも辛くなってしまって…。
そうしているうちに彼らからSOSが来るんです。「政府から予算が来ない。自分たちだけで人をなかなか呼べない。どうしたらいいんだ」と。その時にすごく反省したんです。私は活性化を支援していたつもりだけれど、結局、自分が楽しんでいただけじゃないか、成果が出せなかったと。
その人たちが自立するために何ができたんだろう?と考えはじめ、NPOのマネジメントを学んでみようと思いスクールに通ったところ、出会ったのが、SVPのIさんでした。IさんからSVPのイベントに誘われて、行ったら「みやじ豚」の回で、どハマりしてしまいました。(笑)最初に外で面白いパートナーと出会い、中に入ったらもっと面白い人がいて、世界が広がった。
でも、自分の土木系コンサル会社という立場に引け目を感じてもいました。他のパートナーは戦略系コンサル会社とか投資銀行とか、私からすると「キラキラしている世界の人たち」ですから。ところがある時、そのキラキラの人たちが「事業計画は書けるけど、行政とのお付き合いの仕方なんて考えたことない。支援先にどうアドバイスしたらいいかわからない。」と言うので、私が普通にやっていた行政営業のノウハウを伝えたところ、周りが「すごいね」と言ってくれて…。会社から一歩出ると、こんなに価値を感じてもらえるんだ、と自分に自信もついたんです。それが本当に良かったと思いますし、ここにいてうれしかったことですね。
(相良)私は大学を出て商社に入って、2年半で辞めて、アムネスティーインターナショナルに行きました。何のきっかけか、SVP東京の創業者の井上さんと会って、待ち合わせの赤坂の飲み屋に行ったら、井上さんはMac Book Airを取り出して、SVP東京の説明をし始めて、何かクールな、何かカッコイイことになってるな…と度肝を抜かれたんですね。それで新しい風に乗っていこうということでSVPに参加しました。
SVPで学んだことは、いかにバーンアウトしないか、これがすべてですね。
私がSVPに入ったのは2008年で当時は運用会社で働いていましたが、リーマンショックが起こってしまった。それで自分が勤めていた運用会社も、SVPで協働していた団体も、取締役をしていたベンチャーも、すべて優先順位第一位は資金調達。朝から晩まで資金調達。朝起きてもキャッシュフローのエクセルが脳内に浮かび、夜もエクセルを浮かべながら寝る。あと3か月で資金ショートしますみたいな状況がそこここにありましたね。そんな中ですとみんな参って逃げたり倒れていくわけです。そこでいかに自分のメンタルを強く保つか、これがすべてだということを学びました。以上です。(笑)
(石川)私は2012年にSVPに参加しました。それまでソーシャルなことに関心はありましたが、NPOや中間支援組織との接点はゼロでした。2011年に東日本大震災があり、一度立ち止まって、社会や地域のことを考えることがありました。
自分としてのきっかけは、本業の会社で新規事業をやりますと記者会見もして、いろいろなところを巻き込んでいたのですが、会社の事情で一旦凍結になったんです。全然ハッピーじゃなくて、時間ができた。
たまたま、妻がボランティアに行っていたNPOにSVP東京のメンバーがかかわっていて、妻から「今日、何か変わった団体に会って、名刺をもらったんだけど、みんな2枚持ち。面白い人たちで、あなた関心持ちそうだから、1回イベント行った方がいいよ」と言われたんです。
それでイベントに行ったら、「いい人たちがいっぱいいるな」と思って懇親会に行き、そのままのめり込んで入ったというきっかけです。
学んだことは相良さんに近いのですが、無理をしない。SVPにいる人は、めちゃめちゃ忙しいのに、「俺やってきますよ」みたいなことをさらりと言って、朝4時にメールが来たりするわけです。どう考えても無理している。そういう人たちばかりだったので、無理をしないということは、今のワークデザインラボの活動でも影響を受けています。1人でやればできるんだけど、あえて3人でやるとか、エンジンを吹かしすぎない状態でお互いに制約をかけながらやった方が、持続可能性が担保できると思っています。
(司会レイモンド)次の質問ですが、ご自分がトランジションしていく上で、SVPが役に立った部分があれば教えていただけますか?
(藤原)カタリバでやっている仕事がSVPの仕事にたまたま似ているので、1回やったことがあったり、大事なポイントがなんとなくわかる気がしたり、そういう点は役に立っています。直結しているのは珍しいパターンだと思いますが。
僕はもともとNPO経営者のサポートに興味があったのですが、SVPに入ってからは、パートナーのモチベーションや、やりたい人を増やすこと、維持し続けることにも関心が高まりつつあって、「コミュ部」というSVP内の組織に入っています。それが個人的には学びが大きくて、プロボノやボランティアの人たちがもっと幸せになれるような形は何があるんだろうとか…。
(司会レイモンド)ちょっと補足すると、「コミュ部」はコミュニティ部門の意味で、SVPに参加するパートナーのリクルートや、合宿を企画したり、SVP内部の活性化を担当している部門です。
(藤原)ボランティアが幸せに参加できるような活動を広げたり、深められれば、ということを思っています。カタリバのボランティアは教育系で誰でも入りやすいので、たくさんボランティアがいて、その人たちとどういう風に関わっていけば良い活動になるか、その人たちにとっても良いものができるか、ということを考えています。
(石川)転職したことがある方も多いと思いますが、転職はひとことで言うと「過去の経験を理由に未来を選ぶ」ということですよね。10年間、営業をしてきて、いきなり人事をやりたいので転職しますと言っても、履歴書で落ちますよね。
働くことをチェンジしようとすると、所属している会社の職業経験を見られる。会社では異動もありますが、聞いてもらえない時、待ってしまうと思うんです。それはもったいない、「会社員」というコンセプトがちょっと古くなってきたと思っていました。
日本の労働人口の87%は正規・非正規を含めて会社員なので、この職種の人たちのジョブチェンジにすごく関心があって、コンセプトが「会社員兼経営者」になると結構いろんなことができると思ったんです。
例えば私が明日、北海道に来てくれと言われて、会社員だったら行けないと思うんです。上司になぜ行くのか?と言われますが、自分で会社経営していたら、いい感じがしたら自分の経費で行けばいいじゃないですか。そういう「いい感じがするんだけど、説明できない」状態では会社員はなかなか会社のリソースを使えないので、1歩目が遅れる。ただ、「会社員兼経営者」だったら、自分の経営者部分を使って1歩目を踏み出せる。
ワークデザインラボでは、本業はずっと営業の方が人事系の仕事をしたいとか、PR系の仕事をしたいとか、逆もまたしかりで人事系の方がマーケティングやりたいとか、そういう経験が積めるといいということでやってきました。
なので、私自身もまず自分で実験してみようと、会社員をやりながら会社経営をしてみて、だんだん広がっていった結果、国の事業を受けたりすると数千万円規模になって、バーンアウト寸前の感じになってきました。会社員でありながらオンライン秘書サービスを使ったりしながら、もっと楽にできる仕組みはないかと実験をしていたのですが、2020年にコロナでワークデザインラボのみなさんもテレワークで時間ができて、めちゃくちゃ活発化したんです。色々と試行錯誤したのですが、僕がボトルネックになりだしたので、この辺りがタイミングかなと感じて、会社を辞めてシフトしました。
(相良)SVPでは、「すべては救えない」ということを身をもって知りました。いろいろな立場やアプローチで困難の中で苦しんでいらっしゃる方全てを救うと訴えていらっしゃる方はいると思いますし、素晴らしいと思います。ただ、実際現場にいると活動をやればやるほど、課題感や救えないことが出てくる。
避難民の方は、”I don’t want to lose this opportunity.”「絶対にこの仕事を離したくない」「何が何でも絶対にバオバブの仕事をやり遂げたい。どうすればいいんだ?」「日本にいたいんだ」。悲痛な声です。ご主人とも別れて、お子さんとどうやって生きていくか、すべて人生がかかっているわけです。
先ほど、自閉症と発達障害の方のことについて申し上げましたが、その他に筋ジストロフィーの方や障がいが重複している方もたくさんいらっしゃって、「ずっと生きてきて、こんな仕事を待っていた」「やっとこんな仕事に巡り会えた」。そう言ってくれる人たち全員を私たちは救えていません。その絶望に毎日、対峙しながら仕事を続けている訳です。SVP東京で全員を救うのは難しいということを学び、それにどう現実と折り合いをつけて対応していくか自分の中の覚悟を確立していったのは、今のバオバブにはすごく役立っていますね。
(中島)私が会社を辞めても何とかなると思ったのは、ふたつありました。
ひとつは、SVPにいると、いろいろな社会起業家の方が、いろいろな社会課題に対して人生かけて取り組んでいることに出会うわけです。毎年。しかもそのセーフティーネットを構成する社会起業家を10万円出して支援する人たちもいる。それなら失敗を恐れず安心してチャレンジできるなと思ったんです。それで、飛び出しました。
自分が結局やっているのは、地域の中でいろいろなリソースを顕在化させて、その人たちをつないでチャレンジを応援しているので、自分自身が誰かのセーフティーネットになろうとしているという感じもしています。
もうひとつは、辞めるまでにはやはり不安や葛藤があったんです。その時に、SVPパートナーで会社を辞めて独立している先輩たちを捕まえて質問しまくりました。「何を考えて独立したの?」「本当に食べていけるの?」「辞めたら嫌な仕事もやらないといけないのかな?」みたいなことを聞いたんです。そうしたら、「会社が嫌で辞めるんだったら、独立したら嫌な仕事なんてやらなくていいんだよ」と言われて、「それで生きていけるんですか?」と聞くと、「いける、いける」みたいなことを言われました。(笑)
悲壮感を持って辞めていく人も、独立してうまくいかない人も、世の中にはたくさんいると思うのですが、なぜかSVPで独立した人たちから話を聞くと、みんなすごくうまく波乗りをしていて、嫌なことはやらない。それで人生ハッピーに本当に生きていたので、飛び込んでみたら本当にそうでした。はい。(笑)
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ここで、会場の参加者が小人数に分かれて交流する時間に。登壇したゲストも加わって、にぎやかな時間になりました。
(司会レイモンド)みなさんにこれからの未来のことをお尋ねしようと思っていたのですが、雰囲気を見ると、お互いに質問もあるでしょうし、マイクを預けていいですか?
(相良)今でもよく覚えているのですが、バオバブを創業して国の研究所に入ることになったのですが、ちなみに博士号を持っていないのにその研究機関に入るのは私が第1号でした。それで、京都にある研究所で私が紹介された時にSVPの話が出たら、京大の先生から「それはフリーメーソンみたいなものですか?」と言われて…。(笑)
SVPはそういう立ち位置か!!と思っていたのですが、2週間後に経産省に行ったら、なぜかSVPの話になって、経産省の人から「そうか、相良さんはSVPの人か!」と急に話がまろやかになったんですよ。(笑)
今や、ソーシャルベンチャーやその支援機関に対する風は全然変わって大きく追い風ですよね。岸田首相の「新しい資本主義」からしても、時代も変わったと思います。
(中島)たしかに、「私もSVPです」と言うと、話が弾むこともありますよね…。会社の中でプロボノ活動を立ち上げる人もいますしね。
(石川)自分のFacebookにSVP東京と入れていると、SVPについて何か言われる人もいらっしゃいますね。
2012年から2017年までSVPにいた頃、会社の経営企画部の名刺を交換すると、販促の営業メールがどさっと来たりするので配りづらいところもあったのですが、SVP東京の名刺だといろいろな人と交流できるので本当にありがたいと思いました。先ほどの交流の時間にも話していたんですが、会社員でありながら外の活動ができるのはすごくありがたくて、SVPの名刺を使ってつながっていくのが誇らしくて、2,000枚ぐらい名刺を配りました。
そして、会社の名刺と2枚配りしていたら、秘書課から連絡があって、全社で一番名刺を使っていると言われました。何か怪しい団体に所属しているのではとマークが入り始めたみたいです。(笑)それぐらい活動していました。
(藤原)僕は外資系コンサルでしたが、SVPの人は多かったですね。
話は変わりますが、未来のことで、SVPには居続けようと決めているんです。なぜかというと、感謝が溢れていて、みんなやりがいに満ちていて、この空間、コミュニティがすごいと思っています。
団体と協働していても、大したことはしてないのにめっちゃ感謝されるんです。感謝されるとうれしくなって、もっとやってもっと感謝されて…。仕事をしている時に「こんなに感謝されたことあったかな?」と思う。当然人によりますが民間企業の上司やお客さんはやって当然という感じの方の方が普通ですし…。
これからAIが仕事を代わりにどんどんやってくれるようになっていった時に自分がその分、何をするのか考えた時に、こういう場に入って誰かのためにやって、感謝されて、それが幸せでもっとがんばって…みたいなことが次の社会の大事な部分を占めるんじゃないかと思っていて、それを強くしたい。
団体との協働も興味あるのですが、SVP自体のパワーアップにも関心があって、未来を創っていく組織なのではないかと思っています。期待しています。
(中島)「感謝が溢れている」という話がありましたが、私は独立する時にそれを大事にしていたことを今あらためて思い出しています。やはり会社は決められたルールの中で、お客さんとも契約と対価で成り立っている。結局、お金は何かの価値に対する「ありがとう」を貨幣換算したもの、流通可能にしただけのものです。別にお金がなくても物々交換でも成り立つこともあるし、そういうことを私の言葉としては、「手触りのある関係」と置き換えたんですよね。それでたまたまツールが花で、花をきっかけに、「すごくいいものをここに飾ってくれて、売ってくれて、ありがとう」というその言葉でものすごく自分が癒されていた。感謝された。
SVPの活動を通じて「お金で清算できない感謝の循環」があるのを知っていたので、街に出て「ここにもあるんだ」ということを知ったら、いろんなことが怖くなくなった。路上で何の資格もない人が帽子を被ってマスクして花を売っているわけです。普通は怖いですよね?(笑)
100円の花を値切ってくる人もいますが、ほとんどの人は感謝をしてくれて、対価として100円を手渡してくれる。企業に勤めていた頃、1,000万円単位の仕事をしていましたが、100円をもらい、ありがとうという言葉ももらい、自分がものすごく癒されている。多分、企業に勤めていただけではこの感覚は得られなかっただろうとも思います。優しい人たちが世の中にいるということをSVPの活動を通じて知っていたからこそ、街なかの人の優しさを信じて思いきり飛び出せたということはあったかもしれません。
(相良)素晴らしいですね。
明るい未来があるということを信じて、それに向かって行動する、1人ずつ。すごくきれいごとのように聞こえますけれども、そういうようなことが本当に実現できていくんだなということを身に沁みて体験しています。
今日は皆さん、お越しいただいて本当にありがとうございます。
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◆◆新パートナー募集中です!◆◆
SVP東京では、現在、入会希望者(新パートナー候補の方)へ向けて、入会説明会を開催しています。
2024年3月の入会となります。
▼入会説明会スケジュール
第1回目:12/11(月)20:00~21:30 終了
第2回目:12/26(火)20:00~21:30
第3回目:1/14(日)10:00~11:30
第4回目:1/24(水)20:00~21:30
(いずれもオンライン開催)
参加をご希望の方は、下記のフォームから参加登録をお願いいたします。(できれば前々日までにお願いします)
<<説明会申し込みフォーム>>
参加登録いただいた方に、開催前日にzoomのURLをお送りします。万が一、前日の夜までにメールが届かない場合、下記の問い合わせ先までご連絡ください。
問い合わせ先:svp.newpartner.inquiry@svptokyo.org
パートナーについての詳しい説明はこちら
https://svptokyo.org/partners/
パートナー募集の詳細はこちらでご確認ください
https://svptokyo.org/2023/11/28/2024_partner_recruitment/
◆パートナー紹介の連載記事もあります◆
個性的なパートナーへのインタビュー記事が15人分ありますので、こちらもぜひ。
https://svptokyo.org/category/category-partners/