協働ストーリー 株式会社KARAFURU
「自分だけでは見えない世界が見えた」
2015年に協働を終えた株式会社KARAFURU代表の黒田氏に、協働に至るまでの経緯から、協働の様子について話を伺った。
「一緒に手を動かしてくれる仲間と事業をつくる、贅沢な時間だった」
そう話すのは、2013年~2015年の2年間、SVP東京と協働を行った株式会社KARAFURUの代表である黒田幸氏。日本の伝統工芸を活用したブランド「KARAFURU」を2011年に立ち上げ、商品の企画・生産・販売やECサイトの運営、そして、伝統工芸素材や技術の提案、事業者にノウハウを伝えるキャパシティビルディング事業を行っている。
自分だけでは見えない世界を見たかった ~応募から選考まで~
友人を通してSVP東京を知り、創業後すぐに応募するも残念ながら落選。その1年後に再び応募した。
当時は黒田氏とプロボノスタッフの2名で会社を運営し、商品の販売を少しずつ開始したところだった。展示会に出展し、百貨店などの販路先を広げつつあったが、売上は現在の10分の1程度。
今後、どのように展開し、どの程度まで売上を伸ばせるのか。どう販路を広げていけばよいのか。伝統工芸の職人さんの技術を活かすために、モノをつくる以外の方法はないか。事業の足場固めや発展のために、考えなくてはいけないことがたくさんあった。そして考えが及んでいないことも多々あるだろうことを認識していた。
「事業はこれから何年も続きます。だから、自分だけでは見えない世界を想像したかったのです。そのためには、いろいろな人の知見を借り、広い視点を交えて事業をつくる必要があると思っていました。これが応募をした一番の理由です」と話す。
二度目の応募で一次選考を通過すると、仮Vチームが結成された。二次選考はプレゼン形式で行われる。質疑応答では鋭い質問が浴びせられたが、その場に居たパートナーがしっかりと庇ってくれた。「この人たちは、本当に応援してくれている」。パートナーの気持ちはしっかりと黒田氏に伝わった。 そんなメンバーと共に「中期目標、ブランド事業のビジネスモデルをより強固に確立しつつ、スケールアウトに向けた取り組みに着手し、本格展開の準備をしていくこと」を目指し、無事に選考を通過することができた。
事業の数字を積み上げ、その先を見据える
Vチームとしてメンバーに加わったのは9名。経営企画、会計、コンサル、商品開発、メーカー営業など様々なジャンルの専門を持つメンバーが集まり、自分たちに足りていない部分を補うチームが組織された。
協働が始まって最初にしたことは、2年間で何をするかを決める作業だ。月に4~5回程のミーティングを重ね、しっかりと擦り合わせを行った。財務に力を入れることに決めると、1・2・3年後の計画をつくり、事業の数字を積み上げていった。
適正規模の売り上げはどのくらいか、どのタイミングで商品開発を行うべきか。業界全体の売上傾向をリサーチしたり、職人の生産プロセスを分析したりしながら、全方位的にサポートしてくれた。
パートナーの積み上げていく数字を見つめ、「本当にこの数字でいいのか」と実感を伴わないその数字に不安に感じることもあった。それでも「彼らが言っていることなら、信じてみようと思えた」と話す。活動を通して、信頼関係を築けていたからだ。
作成した事業計画を元に、実際に少しずつ投資を行った。お金が必要だとなれば、その資金をどこから持ってくるのかを一緒に考え、助成金や融資の申請を行った。その際にも、パートナー自身が手を動かし「ここまで掘り下げる必要はあるのか」と思うところまで丁寧にヒアリングして申請書を書く手助けをしてくれた。申請は高確率で通過したそうだ。
そして、数字がクリアになってくると、次に進む方向も見えてくる。彼らが、何もないところに道しるべをつくってくれた。
「私はデザインやマーケティングを考える事が好きだし得意なので、自分だけだったら放っておいてしまう部分だったんですよね」。足りていない部分を補ってくれるメンバーがいたからこそ、創業時に土台を少しずつ積み上げることができた。
定例ミーティングは視野を広げる大切な時間
毎月、経過報告のミーティングを実施していた。そこでは、売上の報告や課題などを共有し、チームメンバーの多様な視点から現状を掘り下げる時間を設けた。この時間を通して、自分たちだけでは見つけられない、さまざまな切り口から物事を見ることができた。そのお陰で、どんどん視界が開けていった。
人手も時間も足りない中ギリギリで回していると、なかなか立ち止まる機会をつくれない。定期的に自分たちの動きを客観的に振り返ることができる場はとても貴重だった。「この時間があったから、会社の基盤となるものがつくれた」と言う。
今でも3か月に1回程度集まり、ミーティングを行う。2年間の協働を通して、チームには強い繋がりが生まれていた。「協働を通して、このコミュニティが好きになりました」と話す黒田氏。実は協働終了から3年後、SVPのパートナーにもなった。協働先団体の代表がパートナーになったのは、SVP東京史上初めてだ。
「世界にはたくさんの社会課題があって役に立ちたいという想いはあるけれど、自分が起こしている事業以外にもう1つ立ち上げるのは難しい。でも、SVPであれば、自分の事業をやりつつも他の事業に関われる」。黒田氏がパートナーとして参加した理由だ。
現在では、ブライダルジュエリーなどラインナップも増え、海外にも販路を拡大しているKARAFURU。創業から10年続く会社が少ないと言われる中、創業期に土台をどう形づくるかはとても重要だ。SVPでつくった土台を元に、KARAFURUは進化し続けている。