パートナーストーリー Vol.2 土谷氏
「同じ価値観を持って、一緒に活動できるような仲間を求めて」
土谷氏は、コンサルティング会社にてサステナビリティに関する法人向けコンサルを行っている。
天然キャラを全面に出して場を和ますと思えば、口調の柔らかさとは裏腹に、切れ味鋭いコメントをクールに差し込んでくる。
「スタートは、マイノリティや社会的弱者に対する意識・・・だったと思います」
小学生の頃、思いがけなく病気をし、1年間入院するという経験をする。それまで普通に生活していただけに、痛切に「学校へ行きたい」と感じ、学校に行きたくても行けない子供たちに思いを馳せたという。また、たまたま同じ小学校に通っていた友達が児童養護施設に身を置いており、話をするうちに、児童養護施設で過ごす子供たちの実情を知った。その頃の気持ちをずっと胸に抱きながら大きくなった土谷氏は、大学で法律を専攻。卒論では日本に滞在する南アジアからの労働者の法的問題に関するレポートをまとめたという。
新卒で出版社に入るも、1年で辞めてカナダの大学へ留学。移民政策、人種問題、マイノリティ問題などの勉強をした後、カナダの日系新聞社にて編集記者の仕事に就き、日系移民に関する取材なども行った。帰国後、企業のCSR部門などを経て、外資系金融通信社でシステム系の仕事を長く務めることになる。
「ボランティアや社会貢献といったことに意識が高い会社だったんです」
社内はとにかくボランティア関連の機会に溢れていたという。グロ-バルで会社を挙げて環境に配慮したオフィスづくりやCO2削減目標を掲げ、環境やソ-シャル関連のゲストスピーカーを呼んだり、イベントをやったり・・・土谷氏自身も、各国オフィスの社内有志らによる環境グループの日本オフィス共同代表を務めていた。また、様々なNPO団体とのコラボイベントに参加し、ホームレスの夜の見回り(ビッグイシュー)や、炊き出し(セカンドハーベスト)、児童養護施設退所者のメンター(ブリッジ・フォー・スマイル)など、現場レベルでのボランティア活動を週末含めて多数経験した。そのようにして蓄積したボランティア活動の時間数が会社のマッチング制度の時間数に達し、日本オフィスで初めて、当制度を活用して、自分の選ぶNPO団体に会社から寄付を行った。
そうこうしているうちに意識が高まり、訪米してSocial Enterprise Conference(ハーバードビジネススクールとハーバードケネディスクールで開催される社会起業家の世界大会)に参加する。そこで、偶然にも当時パートナーだった山本(一般社団法人WITの代表理事)らに出会い、初めてSVP東京の存在を知ることになる。
そのときの縁から、帰国後もことあるごとにイベントに呼んでもらったり、SVP Internationalからゲストが来た時にボランティアとして手伝ったりと、何かとSVP東京と関わることがあったという。そして、自身の中では、ソーシャルな世界にもっと深く関わりたいという気持ちと、自分に何ができるのか、という葛藤が常にあり、そんなときに相談した知人の勧めもあって、土谷氏は週末MBAに通い始める。実は、現職に転職したのは、そのときMBAでできたご縁がきっかけだったという。
「私の場合は、価値観を共有できる仲間が欲しかったのだと思います」
転職してしばらくすると、希望かなって、ESGコンサルティングの部門に移る(ESG = Environmental, Social, Governance)。そしてそのタイミングで、SVP東京への参加も決める。海外に拠点を置く他の団体へも同時に誘われていたが、日本で、同じような価値観を持って、一緒に活動できる仲間が欲しいと感じていた土谷氏にとって、SVP東京がベストの選択肢に思えたそうだ。
ボランティアを通じてなんとなく感じていた規模の小さなソーシャル組織の課題は、やはり協働団体でも見受けられることが多く、そこに外部の、ビジネス経験のある人がサポートする価値は、一緒に活動する中で強く感じたという。そして、自分が提供できる価値よりも、自分が協働先やチームメンバーから受ける刺激、学びの方が各段に大きかったそうだ。
本業のコンサルティングは主に大企業相手で、動きは慎重だが、動いたときの社会へのインパクトは大きい。対して、協働団体はフットワークが軽く、現場力は各段に高いが、リソ-ス不足などがネックになることが多い。SVP側で学んだことが本職で活きることもあり、このまったく違う組織体を平行して経験できている今は、非常に貴重だと土谷氏は語る。
入会後は、まちづくりから社会を変えようとしている建築家団体や、在日フィリピン人女性の生活・社会地位向上を目指す団体の支援チームにも入り、精力的に協働活動を行っている。2018年4月には、毎年行われるSVP InternationalのGlobal Conferenceにシカゴで出席し、自らも登壇して、日本の女性やマイノリティの現状について話をした。また、公正な社会の実現を自分ごととして本気で目指している、志の高い各国のパートナー達からも大いに刺激を受けたという。
シカゴで開催されたSVP Global Conference 2018で登壇する土谷氏
(SVP Vancouver写真提供)
「こんなスキルがある人・・・というよりは、仲間と一緒に社会をよりよくしたい、と考えている人は、是非SVP東京に加わってほしいですね。一人ではなく仲間と、つながって何か大きなことをしたい、本気で社会をよりよくしたい、と思っているような人でしょうか。あと、海外のSVPでは、シニアの方々が大変活躍されています。SVP東京も、年齢層はじめ、様々なバックグラウンドの方に参加していただきたいと思います」